主要なステーブルコインはいずれも1ドル付近で推移するため、「どれが一番価値があるか」ではなく「取引・DeFi・利回り・国際送金のどれが目的か」で選ぶのが正解だ。以下の表が各用途と通貨を対応させている。
初心者がステーブルコインで最初に感じる疑問はたいてい同じだ。「どれも1ドルなのに、なぜこんなに種類があるのか。間違って選んだら困るのか」という疑問である。答えはこうだ。主要なステーブルコインはたしかにどれも1ドル近辺にあるが、発行体・規制の有無・利回りの有無・対応チェーン・ストレス時の耐性という点で大きく異なる。ステーブルコインを選ぶのは「最も価値の高いものを選ぶ」ことではなく、「自分のやりたいことに合ったものを選ぶ」ことだ。
USDTは時価総額約1880億ドル、シェア約60%の市場リーダーであり、ほぼすべての取引所──とりわけTronチェーン上──で最も深い流動性を持つ。いつでもどこでも両替できるのが強みだ。一方でトレードオフとして、発行体のTetherはオフショア拠点に置かれており、準備金の透明性は長年疑問視されてきた。主な目的が頻繁な取引と幅広い流動性・ペアの確保であれば、USDTは依然としてデフォルトの選択肢だ。
USDCはCircleが発行し、米国OCC(通貨監督庁)の規制下で月次監査を受けている。時価総額は約770億ドルでシェア2位であり、DeFi領域での統合度も最も高い。弱点は2023年に露呈した。準備金の預け先であるSilicon Valley Bankが破綻した際にUSDCが一時的にデペッグし、従来型銀行システムへの依存という脆弱性が明らかになった。コンプライアンスと透明性を重視し、DeFiでの運用を考えているならUSDCが最も安定した選択肢となる。
USDSは老舗プロトコルMakerDAOを刷新したSkyのフラッグシップ通貨で、DAIの後継にあたる。時価総額は約110億ドルでシェア3位だ。過剰担保した暗号資産に加えて大規模なリアルワールドアセット(主に米国債)を組み合わせており、最大の特徴はUSDSをsUSDSとしてデポジットすると年率約3.75〜4.5%の利回りが得られる点だ。オンチェーン上のドルを資産として運用したく、RWAとガバナンスのリスクを受け入れられるなら、USDSは検討に値する。
PYUSDは規制当局に認可されたPaxosがPayPalブランドで発行しており、PayPalとVenmoの4億人超のユーザー基盤を背景に持つ。時価総額は約41億ドルでシェア6位で、最大4%の報酬(規制上の制限のあるマーケティング補助)を提供する。弱点はエコシステムの閉鎖性、DeFi統合の浅さ、そしてEthereumとSolanaにのみネイティブ対応している点だ。PayPalエコシステムで日常的に活動し、国際送金が主な用途であればPYUSDの利用体験が最もスムーズだ。
4つを用途にあてはめると明確になる。頻繁な取引→USDT、コンプライアンスとDeFi→USDC、利回り→USDS、国際送金→PYUSDというマッピングだ。より重要な示唆は「資金を一つのステーブルコインに集中させるな」という点にある。2023年のUSDCデペッグや2022年のUSTの崩壊はどちらも、異なるメカニズム・発行体に分散させることがリスクへの備えになると証明した。「どれが最良か」を追求するより、まず自分がやりたいことと受け入れられるリスクを明確にするのが初心者の正しいアプローチだ。